子どもの頃、近代化がいっきに始まった。七輪やクドがなくなり、家庭用のプロパンガスがはいると、ガスコンロが広まった。火鉢(ひばち)は石油ストーブが出ても使っていた。外から帰るとまず火鉢の上に座る。股火鉢だ。これがたまらなく気持ちがいい。
ゴトクと呼ばれる炭の上に置く金物があり、普段はヤカンがかけてある。モチや芋切りもこの上で焼いた。モチは醤油を付けて2度焼き。焦げるニオイが鼻の奥を刺激する。焼き海苔に包んで食べる。
七輪は焼き魚、特にサンマやイワシの丸干しがうまい。イワシは頭からかぶりつく。大人はサンマのワタまで食べる。自分は苦労知らずなので身の部分だけ。今と違ってとても安い魚だった。豊橋は表浜があるので、地引網が行われ、イワシは肥料としても活躍していた。名古屋に来たらサンマが塩サンマだった。昔は、新鮮に生モノを運ぶのは大変だったんだろう。
貧乏人は麦を食えと当時の総理が平気で言っていた時代だ。半世紀して麦も食えない時代になった。