品野には、明眸というお酒をつくる柴田酒造という会社があった。工場でまだ火の入っていない原酒を飲ませてもらった。とんでもなくうまかった。今でもあの味を超えるお日本酒には出会っていない。
その会社は負債を抱えて残念ながら倒産してしまった。ここで働いていた杜氏さんたちは、幸いにも本社が田口にある蓬莱泉・関谷酒造さんに再就職したと聞いている。関谷酒造さんは空(くう)で有名だ。多分、杜氏さんたちは稲武の蓬莱泉、吟醸工房だと思う。蓬莱泉は美味いので空瓶をもって稲武や田口までよく走った。
蓬莱泉は何度も受賞している。しかし、少しづつ自分の味ではなくなってきた。日本酒全体に言えるがフルーティーな味わいが強くなり、クセがなくなってきた。現代の多くの人の口に合わせないと売れないのだ。
明眸の工場で飲んだ酒は本当にうまかった。おいしかったという言葉ではない。うまかった。
明眸の工場の跡はスーパーが入っている。そこの駐車場で、95円のオニギリを食べている。安い。おーいお茶は78円だった。10円上がっている。
スーパーの入り口には、かつての柴田酒造の明眸の看板が残っている。今も品野祇園祭はここを中心に行われている。