テレビがお茶の間の中心になる前は、ラジオだった。テレビが家に入ってもラジオの音はいつも流れていた気がする。あまり喋らない父親も落語や浪花節をよく聴いていて笑っていた。柳家小さんや古今亭志ん朝などが多かった。浪花節(浪曲)はあまりわからなかったが、落語は子供にもある程度分かった。漫才も楽しかったが、少し下品なものが多かった気がする。でも面白かったのは確かだが、落語のほうが好きだった。コントの時代になるともう自分の世界ではない気がした。
youtubeで小三治の『まくら』ばかり集めた動画を見つけた。小三治の喋り口調はたどたどしい気がするが、彼の話の間(ま)が余計に面白みを増している。聴いているお客さんの、話し手が次何を話していくのだろうと考えさせる絶好の間だ。
今『あの人とっても困るのよ』を聴いている。彼の青春時代の思い出を語っている。初恋の人との別れから話が進んで、当時流行った歌を紹介している。
とろい話をしながら、色々なことを考えさせる。この動画には映像はないが、小三治の話す顔つきや動作も想像できる。映像がない分、話の内容が膨らむ。
小三治は語ることが本当に好きだったんだろう。当時活躍した落語家のほとんどは故人になっている。故人になっていても、生き生きと喋っている。